相互評価で作る創作小説集

こんにちは。

今回は中学2年生を対象に、GWの課題として創作小説を書いてもらいました(と、言いますか、まさに現在進行形で進めているところです)


事の発端は、国語に苦手意識を持つ生徒が多く、現に苦手な生徒が多く、やはり本や文字との距離に遠さを感じたことです。
自分自身も中学生のときに、本はなんだかお堅いもの、趣味で活字を読むなんて……と思っていたため、その気持ちはよく分かります。
そこで、同級生が書いたものであれば読んでみたいのではと思いました。
また、お互いに読み合って、忌憚なく評価し合えれば面白く、少し国語にも興味がわくのではというのが、きっかけです。

 

ただ一般に生徒の提出物、特に作文等は個別のフィードバックを要する場合、以下の課題があります。

・教員が一つ一つを素早くチェックすることが難しい。
・教員一人の評価では、客観的な判断を出来ない部分がある。

 

そこで、今回はICTを用いて、教員はそこまで手をかけず、生徒同士で小説の相互評価を行うことに重きをおいて実施してみます。

これには、以下のような利点があります。

・生徒全員が、評価することで教員が評価するよりも効率的である。
・複数の生徒が一つの作品を評価することで、客観性が生まれる。
・生徒が、複数の同級生に評価されることを意識することで、課題に対しての責任感が生まれる。
・小説に対して興味のない生徒も、同級生が自分と同じように書いた小説を読むことで、小説に対して関心を持つ。

 

なお今回使用したアプリは、OneNote、Forms、Excel、Word、OneDriveになります。
たくさんのアプリを使いますが、使う機能はいずれもごく単純なものです。

 

まず初めに授業で使っているOneNoteのクラスノートブックで、課題の条件を書いたページ配付を行います。
このページ上に、生徒に小説を書いてもらいます。
ただいきなり小説を書くことは、なかなか大変です。
そこで、今回は落語の三題噺を参考に、学年の先生方から、小説に使って欲しい言葉のキーワードを募集し、そのなかから3つの言葉を使って、400字以上2000字以内という条件をつけました。
また、事前にネット上の短編小説をいくつか紹介し、参考にしてもらいました。

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次に提出期日が来てから、しばらくしてから評価基準を示し、誤字・脱字を含めて、自身で読み直してOneNoteのページを修正してもらいます。
(本来、評価基準を予め示しておいたほうが良いです)

 

これと並行して、評価者情報と評価を入力するためのFormsを作成します。

評価基準はルーブリックになっているので点数を選択し、最後に簡単なコメントを入れてもらうだけなので、入力は5分程度で出来る作りになっています。

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そして、すべての小説を誰が書いたか、また誰が評価者分からない状態にするため、各生徒に番号をつけ、さらにどの番号の小説を評価するかを、ランダムに決めます。
今回は、一人が評価する小説を最低3つに絞ります。
これには、ExcelのRAND関数を使って、自分の小説の番号1つと、自分が評価する小説3つの番号を、ランダムに番号をふります。
また、IF関数で一人のうちで4つ番号が重複していないかチェックします。 

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このExcelの情報をWordの差し込み機能で流し込み、名前と、自分が評価しなくてはならない3つの小説の番号をふったプリントを用意します。

 

生徒の小説が出来上がったら、OneNoteに書かれたページを確認していきます。
体裁が整っているものをコピーし、予め書式を指定したWordにペーストして、すべての小説を一つのデータにまとめPDF化します。
(ただし、この作業がとても大変です)

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このPDFをOneDriveに保存し、編集権限やダウンロードが出来ない設定で共有します。
そして、OneNoteのページに、データの共有リンクと、さきのFormsのリンクをはりつけます。
OneNoteにデータを直接はっても良いと思いますが、データの重さが気になりました)

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これによって、生徒はOneNoteのページを確認しながらFormsに、小説の評価を3本文入力してもらいます。
もちろん3本文以上入力しても構いません。

 

生徒からの評価がすべて完了したら、Formsから作られた評価情報のExcelから、評価者に関係する情報を抜いたものを、OneNoteにはります。
これによって自分の小説の評価をはじめ、他の小説がどのように評価されているのか、例えば自分が評価した小説が他の人から、どのように評価されたのかも分かります。
この評価をふまえて、さらに修正を加えてもらうことで、最初よりも推敲された小説が出来ます。
この推敲された小説を、もう一度作品集としてまとめます。

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これらは紙に出力したもの、ePub化して電子書籍にしたものを、それぞれ用意します。
そして、最終的にもう一度、別の作品を生徒たちは評価します。
この段階で、教員側もはじめて小説作品を、生徒と同じ評価基準で評価していきます。
これによって、誤りが少ないものをチェックしていくことになるので、負担は軽減されます。

 

紙でこれらを全て実施する場合、相互評価にかかる手間や、筆跡や誰が書いたのか分かってしまうという秘匿性の問題が生まれます。
しかし、ICTを使用することで、これらの問題を解決出来るといって良いでしょう。

 

また、小説の投稿自体を、Formsで行うことで、Wordへのコピーの簡略化も可能です。
ただし、小説のような長文の場合、Formsの入力スペースか小さく作品全体を俯瞰しづらい、Formsに打ち出していくことが馴染まないという問題も出てくると思います。

 

ただし、今回の方法の場合、作品を一つのWordファイルにまとめていく過程を自動化できないという負担は大きいです。
この部分は紙を使い、所定の原稿用紙に書かせたうえで、紙をスキャンしてデータ化するほうが簡単かもしれません。
また、漢字等の学習のために紙に書いてもらうことも有効だという考えも頷けます。
ただその場合、生徒が原稿を修正する際の手間であったり、やなり筆跡から生徒の特定がしやすくなるという問題も出てくるように思います。

 

どの部分までをICTに頼るかは、準備に要する手間と、期待される生徒への学習効果を考えるということが、重要になってくるだろうと思います。
これらは、生徒の実情や、教室での学習環境、想定される未来の社会状況にも左右されるところだと思います。
ただすべてを紙で行うよりも、教員も生徒もいくらかは効率的であることは確かだと思います。
ICTの利用は、一つの手段として取り入れられる部分は取り入れていきたいものです。